彼が10日振りに任務から帰ってきた。

その間一切連絡が取れなかったから、帰ったらいっぱい話そう…なんて思ってたのに、部屋のドアが空いた瞬間、頭が真っ白になって抱きつくことしかできなかった。


彼も同じだったみたい。私のことを強く抱き締めて、はぁって息をついた。

その溜息だけで、会いたかったとか、ちょっと淋しかったとか、触れたかったとか…全部含まれてて。それだけで十分だった。


目線が合うとそのままキスをした。私の気持ちを唇に込めると、分かってる…とでも言ってるかのように深く深く角度を変えてくれた。

でもね、これだけじゃ私の気持ちは伝わらないよ?


だから、私から。お仕事だって分かってるのに淋しくて仕方なかった私から。

会いたくて泣いてた私から。お願いだから、はしたないなんて思わないで。いやらしい子なんて言わないで。


「スコールが欲しいの」この日、私が彼に発した言葉はこれが最初で最後だった。

気付いたらもうベッドになだれ込んでいて彼が耳元で「それは反則」って呟いた。

彼はあんまり見たことがないくらい優しい顔をしていて目が潤んでた。

こっちが泣きたくなって…実際泣いてしまった。


彼の笑顔は大好きなのに、何故か切なくなって涙が出ることがある。その度に彼が好きって気持ちが膨らんで苦しくなる。

泣き出した私をどう思ったのか、涙を唇で拭ってくれた後ぎゅっと抱き締めてくれた。


…スコール知らなかった?それされると、余計に涙が出ちゃうんだよ?


もうたまらなくなって、回した背中に爪を立てた。こんなにあなたが好きなのを、もっと伝えたい。

身体が離れているなんて許されない位に繋がりたかった。

私の気持ちを察してくれた彼は、もう何も言わなかった。


ただただ、ひたすらに求めあってどうしたら一つになれるのかをこの小さな空間で探した。

答えなんて無いのは知ってる。でも私たちは探すのをやめない。


神様、お願い。


私の身体も心も全部この人に伝わりますように。

私が彼をどれだけ愛してるのかが伝わりますように。




pure 2.5


『告白する勇気がありません』


ベッドに腰掛けてセルフィに借りたファッション雑誌をパラパラと捲っていた時、そこだけ食い入るように見てしまった。

雑誌の恋愛相談コーナーなんて、全く縁がないと思っていたのに。


まるで自分に言われているかのような錯覚を覚えたリノアは、雑誌を脇に追いやり、側で丸くなっていたアンジェロに抱きついた。

柔らかな毛並みに頬を埋めると、不意に涙がこぼれてきた。


さっきの事を思い出すだけで、動悸で苦しくなる。

少なくとも、出会った頃よりは嫌われていないのは確かなのだから、それだけでも合格点なのだ。それで満足してたはずだった。

けれど、やっぱり、リノアの中の『彼女』の声はしきりに大きな声ではっきりと言うのだ。

『好きって、言わないの?』と。


(言いたい。スコールに、好きって言いたいよ)

リノアの心は叫んでいるいるけれど、今はまだ、絶対に言えない。

これからSeeDは魔女を倒さないといけない。勿論、私も協力する。こんな大事な時に、自分の言動で彼の心を乱したくなかった。

玉砕する事も怖いけれど、言った事で、スコールとの関係が終わってしまう事が一番怖かった。


「アンジェロ、わたし、どうしたらいい?」

相棒に尋ねてみても、彼女はリノアの手を一度きり舐めただけで、すぐにまた眠りに落ちてしまった。


診断メーカーお題より3種140字 〜スコリノ編〜




1・『ゲームを始めようか』


右か左。リノアの手のどちらかにグリーヴァが握られている。

簡単なゲーム。

答えはもう分かってる。でも不正解を選んだ。ハズレとバカにしてくる顔も可愛いはずだから。

けれど開いた手には


「わざと負けてくれるスコールのそういう所が好き」

と書かれていた。



なんだ、最初から負けって決まってたのか。




***




2・『好きなのにね』


ガーデンのランチにはミニデザートが付いてる。スコールはいつも私にそれをくれる。

本当は知ってるの、プリンだけは好物だって。彼一人の時はちゃんと食べてる所、この前見たんだ。

でも、私が一緒の時は必ずそれもくれるの。本当は好きなのにね。


プリンをくれる日、私が彼に愛されてるって刻まれる日。




***




3・『恋してごめんね 』


辛いよね。悲しいときもあるよね。でも、離れる気は無いの。

あなただって、彼が好きなんでしょ?

ドキドキしたりきゅーってしたり嬉しくて柔らかくて死んじゃっても良いくらい幸せを感じるでしょ?

さっきも胸が痛かったもんね。


ごめんね、わたしのこころ。私はスコールが大好きなの。



恋してごめんね。




そういう気分になった時、私はこっそりサインを送る。


そっと指先で腕に触れたり、普段より長く見つめてみたり、

少しだけコロンをつけたり。


残念ながら彼は気付かない。


でも、それでいいのかもしれないな。


そう言う事に気付いてしまったら、

他の女の子が送ってる秋波にも気付いてしまうから。




リノアの雰囲気があまりにも色っぽくて、どうするべきかいつも悩む。


ふとした時に触れる指先や、じっと見つめてくる潤んだ瞳や、

ほんのりと香る甘い匂い。


要は抱きたかった。けれど、そんなささいな事で彼女を抱いてはいけない気がした。


お願いだから、その姿を他の男には見せないで欲しい。出来ればその甘い香りも。


あんたを見た男達は、確実に落ちてしまうから。





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