スコリノギャグ
スコリノおててつなぎ
スコリノ鼓動
アーセルおまかせ
スコリノ流星群
以上5本をリプして下さった方に先行でお送りしました。
*****
1・スコリノでギャグ

「はぁ…」
これで6回目だ。
さっきからリノアはずっと溜息ばかりついている。

「一体さっきからどうしたんだ?」
堪らず聞いてみると、予想外の答えが返ってきた。

「ねぇ……避妊って大事だよね?」
「ひ…にん?」
一瞬、何の事を言っているのかが分からなかった。
しばらく考え込んで、ようやく彼女の発した言葉を理解した。

(い、い、い、いきなり何言ってるんだ?!?!?!)
瞬時にパニックになった。
どうして彼女がいきなりそんな話をしだしたんだろうか。
俺が避妊をしてないと誤解しているのか?
いや、そんなはずは無い。昨日だって、ちゃんと……破れた形跡も無かったし。

「スコールもそう思うよね。だって、突然赤ちゃん出来たら大変だし」
「あ、ああ……。そうだな」
確かに、突然の妊娠は色々と大変だろう。彼女もまだ母親になるには早いと思っているだろうし。
そもそもまだ結婚もしていないし…だからこっちも必ずつけてるわけで…(100%防げる訳じゃないけど)

「だよね。意外と無責任に避妊しない人が多いんだよね。そう言う人に限って、こどもが生まれたら責任取らないからなぁ」
「そうだな。生まれた子供が可哀想だ」
「だよね〜。病気にもかかりやすいしストレスにもなるから、私は早めに手術したんだけどね」
……ちょっと待て。
手術したのか?まさか、子供を?!
俺は何も聞いてないぞ?!
そんな…!一体いつの話なんだ?

「リ、リノア…い、いつ手術したんだ?」
「ん〜と、1歳ちょっと前かな」
「……………………(1歳?)」
「リノア」
「ん?」
「誰の話をしているんだ?」
「誰って…アンジェロだけど?さっきテレビで悪徳ブリーダーの特集見てたら可哀想になっちゃって」
「そ、そうか……」

(紛らわしいこと言うなよ!)



*****
2・スコリノで手を触れさせる(繋ぐ)

日中は暑いのに、日が落ちると涼しくなってきた。
朝晩冷えると感じる事も増えてきた気がする。
空の色も、少し前までは夜と呼ぶ時間にもまだオレンジが見えていたけれど、今はもう群青色だ。
窓を少し開けて、秋風を部屋へ招くと部屋全体が涼やかになった。

「読書の秋になってきましたね〜」
「そうだな。でも、リノアは食欲の秋なんじゃないのか?」
「う、否定出来ない…」
「リノアはやせ過ぎだから、ちょっと食べても大丈夫だろ」
「え〜!もう少し細くなりたいのに」
「ダメだ。抱き心地が悪くなる」
「だっ………!」
一声だけ発して、そのまま真っ赤になったリノアに睨まれたけれど、全く怖くない。
むしろ、可愛さに拍車がかかっただけだ。

「悪い、もう少し仕事やる…」
後ろ髪を引かれる気持ちでデスクへ戻ると、リノアが背中に柔らかい声を投げてきた。

「うん。おとなしく待ってまーす!」
彼女の手には新しい本。本当は大人しく待つなんて方便なのを知っている。
ほら、視線はもう俺にじゃない。


お互い集中して声も発しない。けれど、確かに感じる暖かい気配。
彼女がいるだけで、この部屋が別世界になる。こんな日常が来るなんて思わなかった。

最後のreturnキーを押して、今日の仕事にケリをつけた。肩が少し張っている。
両手を真上に上げながら彼女を見ると、思わず笑みがこぼれた。

壁を背にベッドの上で本を読んでいたはずのリノアは、そのままの姿勢でウトウトと船を漕いでいた。
近づいて、手の挟まった本をそっと取り上げると、ビクッと肩が震えたが、起きる気配はない。
窓をそっと閉めて、彼女の横にこっそりと並んだ。暫くして、彼女の首がぐらっと傾いて俺の右肩へ凭れ掛かった。

耳元で彼女の吐息混じりの寝息が聞こえる。このまま本格的に寝てしまいそうな雰囲気だ。

「おとなしく待ち過ぎ……あと、30分だけだからな」
腿に置かれたリノアの左手を自分の左手で握り、右腕を回して肩を抱き込んだ。

秋風が洗い上げた、ひんやりとした部屋には、このぐらいの暖かさがちょうどよかった。


*****


3・スコリノで鼓動

(※ちーさんのサイトに嫁入りとなりましたので削除しました)


*****
4・アーセル(で、お任せ)

電車の揺れは、どうしてこうも眠りを誘うんだろう…
任務帰りで体も心もクタクタだから、余計に瞼が重い。早くベッドに入りたい。

「セフィ、眠そうだね」
「うん。この揺れは、あかんな…」
素直にそう言うと、彼も眠気が移ったかのようにあくびを一つした。
やめてよ、私もあくびをしたくなるじゃない。SeeD専用列車はただでさえ乗り心地が良すぎるのよ。
私の眠気が彼に移動してそれがまた私に…なんだか眠気の会話をしてるみたいで、少しだけおかしくなった。

「セフィ、寝てていいよ。起こすから」
「別に、気ぃ使わんでええよ」 
「気なんか遣ってないよ」
その言葉や、こっちを見る目が、なんだかすごく優しくて…前髪を気にする振りをして、思わず目を逸らしてしまった。

目の前の彼は、嘘をつかない。
言ってはいけないことがあっても、方便なんか使わずに黙ってニコニコするだけ。だから嘘は言わない。
こういう時も、きっと嘘を言っていない。本心なんだと思う。

事ある毎に、彼は私に好きだと言う。
でも、だからといってこっちに見返りや返事を求めない。与えるだけ与えて満足するタイプなのだろうか。
自分だったらどうだろう……告白したら好き嫌いは別として、ちゃんとした返事が欲しい、と思う。
でも、彼は一切それを口にしない。口にしそうな素振りすら見せない。何考えてるんやろ。

「アービンってさ、なんでそんなに私に優しいの?」
「え?だってセフィが好きだから。それに、女の子には優しくしないとね」
「ふーん」
相変わらずのお答え。相変わらずの態度。それがちょっと引っかかるのはどうしてなんだろう。

「セフィ、今、ちょっと怒ってるでしょ?」
「え〜なんで?」
内心、当てられた事に動揺した。笑ってごまかすと、彼は真顔で顔を近づけてきた。

「僕が、どうしてこういう態度なのかで、イライラしてた」
「別に、イライラはしてない」
嘘。確実にイライラしていた。嘘つかないくせに嘘を見破るなんて…こわいやつ。
でも、どうしてか、視線を逸らせない。怖い。アーヴァイン・キニアスってこんなに怖かったっけ? 

「セフィが、ずるいからだよ。飛び込む勇気が無いくせに、僕に引っ張って欲しいと思ってる。確かにそれって、楽だよね。受け身なら、いつでも逃げ出せるし」
「え…」
まさか、そんな事を言われるとは思わなかった。冷水を浴びせられたように眠気なんか吹っ飛んで、背中に冷や汗が伝う。
それを分かっているように、彼は静かに目を伏せた。

「僕はきみが好きだよ。自惚れじゃなく、きみも僕が好きだ。もう知ってる。でもさ、『こっち』に来る気がないから、僕もこれ以上近づかない。ただ、それだけ」
彼の言葉を何度も反芻して、自分が泣きそうになっているのに気付いた。
どうしようばかりが頭にこだまして、何に対してどうしようかさえ分からない。
こんな時、他の子ならどうするんだろう。キスティスなら?リノアなら?
分からない。どうしよう。

「ごめんね。言い過ぎちゃったよ。そんな顔させといて、気にしないでとは言えないけど」
「…………酷い顔、しとる?」
恐る恐る聞いてみる。
きっと、自分でも嫌になるくらい、変な顔なんだろうな。

「う〜ん、強いて言うなら……最強に可愛い」
「ぶっ!なんやそれ」
「セフィが僕の事で悩んでるんだよ。可愛くない訳ないじゃない?」
こういう事を自然に言うからみんな誤解するのよ。やっぱり、こいつは食えない。

「なぁ、アービン」
「ん?なんだい?」
「私が『そっち』に行ったら…何か変わる?」
私は一番それを恐れている。今までの心地よいバランスが崩れていくのが嫌だ。
でも、このままなのはもっと嫌なんだと、ようやく気がついた。
そう、私は、彼が好きなのだ。多分好きすぎるくらいに好きなのだ。

「変わるものもあるだろうし、そうでないものもあると思う」
やっぱり嘘はつかないのね。
でも『変わらない』と言い切られるよりよっぽど誠実で、悪くないわ。

「途中で後戻りとか、保留とか…そういうの、アリ?」
「いいんじゃない?前に進むだけが能じゃないと思うけど?」
「そっか、なら、そっち行く」
「ん、りょーかい」
なんとも、あっさりしたもんだった。
踏み出してしまえば、大した事じゃない気がしてくるから不思議だ。
でも…私を見つめる彼の目が、さっきとは違う何かを持っていて——あぁ、とうとう始まってしまったのだと感じた。

「ね、セフィ」
「ん〜?」
「ずっと我慢してたから、ご褒美くれない?」
「ええよ」
多分そう来ると予測してたから、素直に目を閉じた。


ややあって、振ってきたキスの味は、さっきシェアして食べたパスタの味がした。
うん、こういうのも悪くないわ。


*****
5・スコリノで流星群

バラムガーデンの年間行事は他のガーデンに比べると多いらしいが、普通の学校よりは少ない。だから、たまにはみんなで流星を見ようと言い出したのはゼルだった。
どうやら今年は新月で、星がよく見えるらしい。
元々お祭り好きの奴らばかりだ。あっという間に企画は成立し、年少組(といっても12歳以上だ)はダンスホールで、それ以外は中庭と校庭、ガーデン校門付近で星を眺める事になった。
日の落ちるスピードも早まって夜が長くなってきた頃、吹いてくる風もいつにも増して冷たい季節になったが、当日は運良く天気もよく無風だった。

運良く任務も延長する事無く、無事に予定時刻に間に合った俺が部屋へ戻ると、さも急かすように、リノアはブランケットや薄手のコートをベッドに広げながら待ち構えていた。

「スコールおかえりー!」
「準備万端だな」
「だって、流れ星見るの楽しみなんだもん!」
「そうだな。星なんて見るの、久しぶりだ」
彼女のはしゃぎぶりに触発されて、ついつい笑みが溢れた。

そういえば、彼女との出会いも流れ星からだった。
あの時は、あの場に馴染めなくて、ぼーっと空を見上げていたんだった。
流れ星が落ちた先に、彼女がいて。
こんな事を言ったら笑われるかもしれないけれど、あの星がそのまま人に姿を変えたんじゃないかと思う程、リノアが光って見えた。

「ピークは何時だっけ?」
「うーんとね、0時からだよー」
「じゃあ、まだ少し時間あるな」
「でも、いい場所は早く行かないと取れないよ〜」
「大丈夫、後輩にお願いしてある。それに、特等席は別にあるし」
「え?!それって職権乱用なんじゃないの〜?」
「こういう旨味もないと、『上』なんてやってらんないからな」
「うわ、やな上官!」
「そんなやな上官が好きなのは、一体どこのどなたですか?」
「……………」
言い負かされるなんて思っていなかったんだろう、リノアは顔を真っ赤にして黙りこくってしまった。
そんな仕草さえ可愛くて仕方ないのだから、俺は相当バカなんだと思う。
リノアは気まずくなったのか、慌てて首を振って口を開いた。

「ね、さっき言ってた特等席って?」
「あぁ…知りたい?」
「うん」
「ここ、だ」
「え?スコールの部屋が特等席なの?なんで?」
「ちょっと早いけど、種明かしするか」
本当はもう少し後に取っておこうと思っていたが、彼女の期待の眼差しに負けてパチリと電気を消した。

「?!スコール?真っ暗で怖い!」
「大丈夫。今、誘導するから」
夜目がきく俺はすぐに彼女の姿を確認すると、手を引いて窓際まで誘導した。
ブラインドを上げて窓を開くと、ようやく彼女も分かったらしい。緊張して握っていた手が少し緩められた。

「そっか…ここからも見られるもんね」
「ああ。キャンバスは小さいけど、ここの方が空には近い」

流星群が見えるには早いけれど、もう空には一面の星が瞬いていた。
こっそり隣を見やれば、彼女はもう、星々の虜になっている。

(ちょっと妬けるな…)
いつでもこっちを見ていて欲しいなんて、そんな事は言えない。でも、願ってしまう。自分はどこまで独占欲が強いんだろう。
そんな自分を振り払うように空へ向き直った。
こんなに近くに見えるのに、果てしなく遠い光。けれど、柔らかな光。
掴み所がなくて…でも、目が離せない。まるで、誰かさんの心のようだ。
どれくらいそうやって眺めていたのか…気付けば、リノアがじっとこっちを見ていた。

「やっと、こっち向いてくれた」
そう言って綿毛のようにふわりと笑うと、繋ぎっぱなしの手をきゅっと強めた。

「スコール、ずっと星ばっかり見てるんだもん。たまにはこっちを見てくれても良いのに…って思っちゃった」
「(それはこっちの台詞なのに…)同じこと考えてたんだな」
ごくごく小さく呟いて笑ってみせた。

「え?今、なんて…?」
「いや、なんでも無い。…なぁ、今から外、行くか?」
こうしているのが心地よくて離れ難くて、遠回しに聞いてみる。

「きっと…場所、用意してくれるよね?………でも、キャンセルってアリ?」
「大丈夫だろ、きっと」
「後輩さんに後で謝らないとね」
「そうだな」
リノアも同じ気持ちだったようだ。みんなと見る星もきっと楽しいものなんだろうが、こうして二人きりで眺める星空も穏やかで安らいだ気持ちになる。

「「あ!」」

一つ、また一つと星が流れていく。
遠くから歓声が上がった。みんなも同じ流れ星を見ていたらしい。

「ね、スコール」
「なに?」
「あの時みたいに…して欲しいな」
「あの時?」
「うん。ほら、あの時、こうして同じように流れ星を見てたでしょ?」
「……どちらをご希望で?」
忘れられない流れ星はふたつ。
だから、どちらをリノアが思い浮かべていたのか、気になって聞いてみた。

「え……?」
「ダンス?それとも…」
耳元でその先を囁くと、彼女の体温が一気に上がった。

「どっち?」
「………今は、二つめの方が、いい」
「リノアの希望なら、なんなりと」
繋いでいた手を取って、反対の手で背中を引き寄せた。
触れ合う直前、あの時のように微笑んで、あの時と同じ言葉を紡いだ。
それを聞いた彼女の頬は、暗がりのはずなのに、薔薇色に染まって————。



「リノア、好きだ。どうか、騎士に祝福のキスを」

 

 

 

 

 

BACK/TOP