表ページ スローダウンの半裏話です。

とある方に献上しましたが、ご縁がなくなったので墓場行き。初期に書いたので色々と描写が抜けてます。


――――でも、その前に。

少しだけ翻弄させられた分を、仕返しさせてもらう。

 

「リノア」

「なぁに?」

「さっき、なんで帰らなきゃいけないのかって聞いてたよな」

「うん」

「帰らないと決まってたら何を期待したんだ?」

「!」

「どうした?顔が赤いぞ」

 

やっぱり、な。

素直な反応に、顔が緩みそうになるのを必死に抑え込む。

 

「べ、別に期待なんか」

「リノアは困った時、必ず足がぶらぶらするよな」

「そ、そんな事ないよ!」

「期待してた事って、あれか?」

 

そう言って俺が親指で差した方向を見て、さらに顔を赤くして俯く。

 

「ち、違っ!」

「なんだ、違うのか」

ばか」

「人を馬鹿呼ばわりかやれやれ」

「揚げ足取らないでよぉ」

 

眉が下がって半泣きのリノアを見て少し罪悪感が湧いた。でも、今日は止めてなんてやらない。

せっかく降ってきた休みだ、おまけにまだ日は超えてない。

だったら、ゆっくり楽しまないと。

 

「そうだ、リノアがこれからの予定作るんだったよな。『今から』どうする?」

「え、い、今から……?」

「どうする?」

 

嫌みなくらい優し声音で聞いてみると、リノアは観念したのか、ボソボソと俺の耳元で口を開いた。

 

「どうしても言わなきゃだめ?」

「ああ」

「どうしても?」

「どうしても」

「ねぇ、分かるでしょ?」

「言ってくれなきゃ分からない。いつもリノアがそう言ってるだろ?」

 

彼女の体が熱を帯びてくる。あともう少しだ。

もう少しで彼女は羞恥の殻を破り、『ほんとうのリノア』が姿を現す。

 

「今日のスコール、とっても意地悪」

「嫌か?」

「…………嫌じゃ、ない」

「なら、教えてくれ。どうする?どうしたい?」

 

自分の言葉も、かすれて甘くなる。

彼女を抱いて椅子に座ったまま、答えない彼女に焦れて、少しだけ腰を揺らした。

それだけで、彼女はその先の期待でぐっと色気を増した表情に変わる。

いつもそう。

じわじわと追いつめ、出口を完全に塞いで、ようやく彼女は本当の事を言う。

 

「恥ずかしいよ」

「ここにいるのは二人だけだ」

「………」

「リノア、教えて」

 

子供をあやすように、そっと耳元で囁いた。

 

深い瞬きのあと、見つめた彼女はもう、『女』だった。

 

「えっちぃこと、したい」

「例えばこんな?」

 

言い終わらないうちに、噛み付くようなキスをして彼女を抱き上げた。

ここまで我慢した自分と、羞恥を捨てた彼女が自分へのご褒美とばかりに互いの口を食む。

目的地にたどり着いた瞬間から、服を脱ぐのさえ時間が惜しく感じられて、もどかしさに指がもつれる。

イラついて無理矢理シャツを脱ぎ捨てれば、どこかでビッと縫い目が裂ける音がした。

彼女が腕をクロスして服を脱ぐ隙を狙って両手で形のいい胸を包み込むと、リノアの口から嬌声が漏れる。

熱さと柔らかさに圧倒される。自分の体には決してない感触に酔い、永遠に耽ってしまいそうになる。

いやらしく先端を舐め上げれば、甲高い声を上げて俺の頭を抱え込んできた。

 

タガが外れてしまったリノアは、怖い程に艶めかしい。

身体だけじゃない。彼女の香りや仕草だけでこっちがおかしくなる。甘い蜜を滴らせた麻薬だ。

欲に濡れた瞳で見上げられると、自分だけが知っていると思うと、もっと溺れさせてみたくなる。

翻弄するつもりで挑んでも、返り討ちにあうのはいつも俺の方だ。

 

「リノア、今からどうして欲しい?」

 

なけなしの理性で耐えながら、彼女の命令を待つ。魔女の騎士は従順でなければならない。

息も絶え絶えな彼女は、もう脚をすり合わせて無意識に腰を揺らしている。そんな姿だけでイケてしまいそうになる自分が情けない。

彼女の手を取って、汗ではないシーツの染みをわざとらしく触らせてみれば、リノアの全身が震えた。

 

最後の理性の扉は、すぐそこに。

 

 

「スコール…」

 

命令が下る。

 

 

「中へ…イカせて…」

 

 

魔女の命令は、絶対だ。

 

 

 

 

***

 

 

 

「もう、おひるまえだよ…」

「だな…」

「おなかすいだけど、たぶんたてない」

「…すまない」

「おひるねしたら、なおるかな」

「でも、腹減っただろ」

「うん。でももうちょっと、こうしてたいかも」

「なにか、食堂から持ってくる」

「ありがと。ねてたら、おこしてね」

「ああ」

 

「すこーる」

「なんだ?」

「なんだかこういうの、なまけきってて、すっごくいいね」

「最高だな」

「ね、きすして」

「いいな。最高の休日の始まりだ」




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